【3】 相違点と共通点(手の操作法)

私が合気道学校上級クラスに通い始めた頃、担当の先生は、奥村繁信師範(九段)と市橋紀彦師範(八段)でした。両先生の手の動かし方の説明は、まったく違っていました。奥村先生は「手は回す」と言われ、市橋先生は「手は上下に動かす」と言われました。手の動かし方という基礎の部分で、こんなにも説明が違うものかと随分悩んだものでした。


★ 両先生が一生懸命に言われたこと
◆ 奥村先生:
手の操作法について、黒板に五通りの名称を書かれ、何度も教えていただきました。
(例:右手を動かす)
1.外回し・・・掌を相手に向け、手を時計周りに回す。回す範囲(高さ)は自分の顔から臍の間
2.内回し・・・掌を自分側に向け、手を反時計周りに回す
3.外返し・・・下に向けていた掌を上に返す
4.内返し・・・上に向けていた掌を下に返す
5.大回し・・・手を回す方向は外・内の両方、手は頭の上まで上げて回す
        (内回転投げで、相手の手の下をくぐる時の要領)
◆ 市橋先生:
手は「目の前に上げ、上げたら下ろす」、「体の中心で剣を振り上げ、振り下ろす感じ」とシンプルでした。「手」の事よりも「腰」の事をよく注意されました。もっと「腰を回せ」、「腰を突くんだよ」、「腰を切りなさい」


★ 両先生の受けを取らせていただいて感じたこと
◆ 奥村先生:先生の手は、回っているようには感じず、むしろ上下運動しているように感じた。
◆ 市橋先生:先生の手は、上下しているようには感じず、むしろ螺旋運動しているように感じた。
つまり、目で見たこと、耳で聞いたことと、実際体で感じることは違うのです。


★ 良く観て気付いたこと
◆ 奥村先生:
説明の時に、先生の掌は両肩より大きく外に出るが、実際の技ではそれ程出ていない。むしろ先生の両肩の範囲に収まっている。
◆ 市橋先生:
先生の腕は上下に動くが、掌は手鏡の如く先生の顔側を向いたり、上を向いたり、下を向いたりする。
◆ 共通すること:
ボーリングもソフトボールの投手のフォームもフィニッシュの形は人それぞれですが、リリースの瞬間名選手は皆、臍はきちん正面(ピン、バッター)を向き、脇は締まっている気がしますが、投げる瞬間のお二人の先生の臍の向きと脇の形は、全く同じであることに気付きました。もちろんこのことは他の先生にも共通です。


★ 私見

相違点はすぐ分かりますが、なかなか真似することはできません。しかし、共通点を見つけその部分を先に行えば、相違する部分も比較的容易に真似ることができる気がします。


開祖は口で説明されることは滅多に無かったそうです。開祖から教わった先生方は、開祖との稽古の中でその先生が感じたこと、そして工夫されて上手く行った方法を大切にされ、それを私達に伝授いただいたのではないかと思います。奥村先生は手の動きを工夫され、市橋先生は手の動きはシンプルにし、腰の回転力に注力されたのではないでしょうか。


二人の先生が表現された方法は異なっていますが、共通しているのは開祖が大切にされた「入身と円転」の理合を、それぞれの先生が最も重要であると感じられた方法で、私達に身を持って教えていただいたことだと思っております。




奥村繁信師範の指導稽古「手の操作法」
     
               資料提供 YouTube  YouTubeハンドブックへ▶
1.大回し (逆半身:開始20秒~、相半身:開始6分12秒~)
2.外回し (相半身:開始2分10秒~)
3.内回し (相半身:開始3分35秒~)
4.外返し (相半身:開始4分50秒~)
5.内返し (このビデオには収録されていません)

市橋紀彦師範の自由演武
     
               資料提供 YouTube  YouTubeハンドブックへ▶
先生の手の動きは、正に上下に動いているように見えます。手の動きはいたってシンプル、腰の動きにも注目し、観てください。



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