合気道 八千代円明会|心に残る教え 11. 相違点と共通点(手の操作法)

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心に残る教え 11. 相違点と共通点(手の操作法)

私が合気道学校の上級クラスに通い始めた頃、担当の先生は奥村繁信師範(九段)と市橋紀彦師範(八段)でした。 ところが、このお二人の「手の動かし方」の説明はまったく異なっていました。 奥村先生は「手は回す」と言われ、市橋先生は「手は上下に動かす」と言われるのです。 基礎であるはずの手の操作法がここまで違うのかと、当時の私は随分悩んだものでした。

両先生が強調されていたこと

奥村先生
手の操作法について、黒板に五通りの名称を書かれ、繰り返し丁寧に教えてくださいました。(例:右手を動かす場合)

  1. 外回し … 掌を相手に向け、時計回りに回す。回す範囲(高さ)は自分の顔から臍の間
  2. 内回し … 掌を自分側に向け、反時計回りに回す
  3. 外返し … 下に向けていた掌を上に返す
  4. 内返し … 上に向けていた掌を下に返す
  5. 大回し … 外・内の両方向に大きく回し、手は頭の上まで上げて回す。(内回転投げで相手の手の下をくぐる時の要領)

市橋先生
説明は非常にシンプルで、「手は目の前に上げ、上げたら下ろす」「体の中心で剣を振り上げ、振り下ろす感じ」といったものでした。
そして「手」よりもむしろ「腰」をよく注意され、「もっと腰を回せ」「腰を突くんだよ」「腰を切りなさい」と繰り返し指導されました。

受けを取らせていただいて感じたこと

奥村先生
先生の手は“回っている”ようには感じず、むしろ上下に動いているように感じた。

市橋先生
先生の手は“上下している”ようには感じず、むしろ螺旋を描いているように感じた。


つまり、目で見たこと・耳で聞いたことと、実際に体で感じることは必ずしも一致しないのです。

よく観察して気付いたこと

奥村先生
説明の際は掌が両肩より大きく外に出るが、実際の技ではそこまで外に出ず、むしろ両肩の範囲に収まっている。

市橋先生
腕は上下に動くが、掌は手鏡のように、顔側を向いたり、上を向いたり、下を向いたりと細かく変化している。

共通点
ボーリングやソフトボールの投手のフォームは人それぞれですが、名選手は皆、リリースの瞬間に臍(へそ)が正面(ピン・バッター)を向き、脇が締まっているように見えます。
そして、投げる瞬間のお二人の先生の臍の向きと脇の形が、まったく同じであることに気付きました。
両先生に共通していたのは、投げる瞬間の「臍の向き」と「脇の形」でした。もちろん、これは他の先生方にも共通しています。

私見

相違点は目につきやすいですが、いざ真似しようとすると難しいものです。 しかし、共通点を見つけ、その部分を先に身につけると、相違点も比較的容易に真似られるように感じます。 焦らず共通点から身につけていきましょう。

開祖は口で説明されることが滅多になかったと聞きます。 開祖から直接学ばれた先生方は、稽古の中で自ら感じ取ったこと、そして工夫して上手くいった方法を大切にされ、それを私たちに伝えてくださったのではないでしょうか。 奥村先生は手の動きを工夫され、市橋先生は手の動きをシンプルにし、腰の回転力に重きを置かれたのだと思います。


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