【5】 禊(みそぎ)
合気道学校時代、故奥村繁信師範から教わった一つに木剣での素振りがあります。準備体操が終わると次によく木剣での素振りがありました。
先ず、右半身に構えます。次に右足を一歩下げながら剣を振り上げます。次に時計周りに少し(360度÷28)回りながら下げた右足を前に踏み込み、剣を振り下げます。左足をコンパスの針とし、右足を引きながら振り上げ、踏み込みながら振り下ろす。これを繰り返し素振りしながら、自分を中心として時計回りに一周回る。一周する間に28回素振りをする。この素振りの稽古の時、奥村先生が口を酸っぱくして言われた事が二つあります。
一つは、「手で剣を上げてはいけない、腰で振り上げる。手で剣を下ろしてはいけない、腰で振り下ろす」 実際、数周回った頃には手で上げようとしても力が入らず上がらない。右足を後ろに引く時に腰を切り上げ、木剣を振り上げなければならない。下ろすのも同様。円を描きながら素振りをし、腕の力も握力もなくなる頃、腰で振り上げ腰で振り下ろす感覚が出てきます。先生は「技を掛ける時も同じだよ。手の力に頼るのではなく、腰の力を使うのだよ」と教えてくださいました。
そしてもう一つは、「空気を切るのではない。見えない相手を斬るのでもない。自分を斬るのですよ。自分のけがれを斬り払いなさい。開祖は、『合気道は小戸の神業じゃ』と言われてました。素振りをしながら、禊(みそぎ)をするのですよ」
この頃まだ私は、「小戸の神業」も「禊」もその意味を知りませんでした。古事記を参考書にして「合気神髄」を何度も何度も読む内に少しは分かってきた気がしますが、本当は今でもよく分かっていないかもしれません。
---故奥村繁信師範の教え--- |
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