【14】 審査での留意点
故藤田昌武師範は、「審査だからと言って特別の稽古をしなくても良い。普段やっている事を審査でできればそれで良い。」と言われています。なるべくその通りにしているつもりですが、実際の審査では緊張もしますし、なかなか普段通りにできるものではありません。
また、本部道場の師範達は、審査の時どんな所を見ているのだろうかとか、何を注意すれば良いのだろうかと言うような事も気になり、時々色々な先生方に一寸ずつ教わっています。今まで教わってきたことをまとめてみます。
◆ 礼
「礼に始まり礼に終わる」と言います。これは審査でも同じです。最初に、正面に礼をする時にきちんとできているか否かで、後の印象が随分変わって来ます。手は静かに着く。背中は丸めず、首は折らず、尻は浮かせない。謙虚な気持ちで礼をします。
◆ 間合い
向かい合って座る際、概ね一畳の間合いを取って座ります。技に移る時、受けの攻撃方法によって間合いは若干異なりますが、受けは一足で攻撃できる間合いを取ります。例えば相半身正面打ちなら、前の足を一歩踏み出したところで正面に当たる。相半身横面打ちなら、後ろの足を一歩踏み出したところで横面が当たる間合いを取ります。間合いについては特別な規定はありませんが、体全体で感じながら適切な間合いを取るようにします。
◆ 受けは正確な攻撃をする
受けは、攻撃した後の取りの体捌きを意識せず、先ずはきちんと正確に打ちます。掴む時は取りの正中線を外し、側面から掴みに行きます。級・段が上がるにつれ、受けの攻撃にスピードが求められるが、一本一本しっかりと間合いを取り、丁寧にそして正確に攻撃します。取りに崩された体勢を立て直すのは、正確な攻撃をした後です。受けの攻撃がいい加減では取りの技が生きてきません。
◆ 残心
取りは、技を掛けた後も気を抜かないようにします。投げた時、もし体勢が崩れても立て直し、残心を取ること。抑えた後立ちあがる時も、受けとの間合いを取りながら立ちあがり、残心を取ります。
◆ 基本技
・間合いはしっかり取れているか?
・相手の攻撃に対し、技をかけるタイミングと捌きは適切か?
・表と裏のある技は、きちんと区別してできているか?
・膝は緩んでいるか? 肩に力は入っていないか?
・残心は取れているか?
初心者はゆっくりで良いから自分の体を大きく使い、はっきりと技を施すことが大切です。
上級者は出題された技がすぐできるだけではなく、しっかりとした体捌きによる正確さ、なめらかな動きによるスピード、バランスの取れた良い姿勢、気迫にあふれた呼吸力が求められます。
◆ 武器取り
徒手の延長に武器取りがあります。武器が長くなるにつれ、間合いを取るようにします。普段あまり武器取りの稽古をしていませんが、徒手での捌きがしっかりできれば武器取りも同様です。武器取りは徒手で練り上げた基本技で充分対応できます。但し、武器に対して有効な手法もありますが、弐段、参段ともなれば普段の稽古でそのような事も研究しておきます。また、取り上げた武器の刃を握ったり、安易に武器を相手に渡してはいけません。これも普段の稽古における心構えがそのまま現れますので、普段から気を付けていなければいけなりません。
◆ ニ人掛け、多人数掛け
相手の数が一人ではなく、二人、三人と増えてくれば、緊張も増しだんだん切羽詰まって来ます。自ずと息も上がり、バランスも崩れ、一つ一つの技の切れもなくなって来ます。しかし、これも普段の稽古の結果が如実に現れたものですから、普段の稽古法を考え直し日々鍛錬するしかありません。一人の相手と稽古する時も、相手が複数いると想定し、四方八方に気を配る訓練を積みます。また、多人数掛けでは相当なスピードが要求されますが、ただ速いだけでは相手は崩れません。正確で丁寧にそして速く相手を崩すにはどうすれば良いかを日々研究しなければなりません。
◆ まとめ
昇級・昇段は稽古を続けて行く上での励みではありますが、それが目的ではなく、あくまで過程に過ぎません。審査では普段稽古でできている以上の事は決してできません。やはり普段の稽古が大切です。しかも基礎と基本が特に重要と思います。