【15】 牛若丸と相抜け

奥村繁信師範は、よく牛若丸の話をされていました。京の五条の橋での牛若丸と弁慶の戦い。この時の牛若丸の「相抜け」が最高の勝ちの納め方であると教わりました。合気道探求第3号、第4号にその話が掲載されていますので、ご紹介いたします。是非全文を読んで頂きたく「合気道探求」同号の購入をお勧め致します。




◆「これから合気道をはじめる人のために」 奥村繁信 合気道探求第3号より抜粋
自分に勝ってからはじめて他人に勝つことが出来る。他人に勝つには次の四つの勝ち方がある。
①殺-切る、突く、打つ、蹴る、締める
②傷-切る、突く、打つ、蹴る、締める
③生けどる-なげる、おさえる
④争わない-かわす、相抜け
この四つの勝ち方の中で、最上は④の「相手と争わない」である。争っても、相手を殺したり傷つけたりしないで、暴力だけを封じ、相手を生けどる③の勝ち方が大切である。殺傷は最も下手な勝ち方で、遺恨を残す。


わが国では理想の勝負像として、牛若丸と弁慶の、京の五条の橋の上のわたり合いを、フィクションとして九百年間伝えて来た。「相抜け」が最高の極意であることを強調しておく。合気道は技術的には、相手を殺傷する事のない「行けどり研究」であることを忘れてはならない。



◆「合気道の修業を始めるにあたって」 奥村繁信 合気道探求第4号より抜粋
古来、我が国では、日本武道の理想的な勝負像を、牛若丸と弁慶の、京の五条の橋の上の立ちまわりに、これを求め、900年もの長きにわたって、子々孫々に、このエピソードを伝えて今日まで来ているのであります。ちなみに、牛若丸の先生は、鬼一法眼であります。われわれ合気道の修行者もこれをお手本とし、絶対に相手とは衝突することなく、常にすれちがい、かわし、組むことなく相抜けて、相手を殺傷せずに生けどってしまうという、投げ技、おさえ技を体現しなければならないのであります。




【ご参考】
・鬼一法眼ついて、「文武両道」▶
・相抜けについて、ウキペディア▶
「相抜け」とは、針ヶ谷 夕雲(はりがや せきうん、生年不詳 - 1669年(寛文9年))が用いた剣術用語で、「無住心剣」による立ち合いの理想を説いたものとされる。双方が傷を負う相打ちとは異なり、相抜けは互いに空を打たせて、無傷の分かれとなる。むしろ高い境地に至った者同士であれば、互いに剣を交える前に相手の力量を感じ取り、戦わずして剣を納める、というものである。




唱歌「牛若丸」 (作詞・作曲者 不詳)


   京の五条の橋の上、
   大の男の弁慶は
   長い薙刀ふりあげて、
   牛若めがけて切りかかる。


   牛若丸は飛び退いて、
   持った扇を投げつけて、
   来い来い来いと欄干の
   上へあがって手を叩く。


   前やうしろや右左、
   ここと思えば又あちら、
   燕のような早業に、
   鬼の弁慶あやまった。
牛若丸と相抜け



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