古事記研究 【17】

第3章 地上の平定と天孫降臨

17.復命しない神々と末路 21.地上の平定と国譲り

18.建御雷之男の神の派遣 22.天孫降臨

19.事代主の神の服従 23.嫁選びの過ちと嫁の出産

20.建御名方の神との力比べ
目次第1章第2章第3章第4章◆古事記「上つ巻」に登場する神々(五十音順)


第3章 地上の平定と天孫降臨

17.復命しない神々と末路

天照大御神は「葦原の中つ国と呼ばれているあの国は、豊葦原の千秋の長五百秋の水穂(とよあしはらのちあきながいおあきのみずほ)の国と呼ぶべきで、本来ならわが子であるあなたが治めるべき国なのです。」と正勝吾勝々速日天之忍穂耳の命に言われ、葦原の中つ国へ行くことを命じられました。忍穂耳の命は、天の浮橋に立たれ、葦原の中つ国の様子をご覧になると、「豊葦原の千秋の長五百秋の水穂の国は、大変騒々しく、乱暴で下品な国ではないか。(私は行きたくない)」と言われ、帰り上られて天照大御神にお願いされました。


天照大御神は、高御産巣日の神と天の安の河の河原に八百万の神々を集めて相談し、思金の神にいずれの神を遣わせば平定することができるか案を出させました。思金の神は、「天菩比の神を遣わしましょう」と答え、天菩比の神を葦原の中つ国へ遣わしました。しかし、天菩比の神は大国主の神にへつらって、三年たっても復命しませんでした。


天照大御神は、また高御産巣日の神と八百万の神々に相談されました。そこで思金の神が「天津国玉の神の子、天若日子を遣わしましょう」と答え、高御産巣日の神は、森の鹿を射る天のまかこ弓と大蛇も殺せる天のはは矢を天若日子にお与えになり葦原の中つ国へ遣わしました。しかし、天若日子は、葦原の中つ国に降りて着くとすぐに、大国主の神の娘の下照比売と結婚し、そしてその国を獲ようと思い、八年たっても復命しませんでした。


そこで、天照大御神は、また高御産巣日の神と八百万の神々に「天若日子も長い間復命しません。また別の神を遣わして、天若日子がなぜ長い間留まっているのか理由を問いたださなければいけないと思うが、いずれの神が適任でしょうか」と尋ねられました。思金の神は、「雉(きぎし)、名は鳴女(なきめ)を遣わしましょう」と答え、雉の鳴女に「お前が天若日子のところへ行って、天若日子に『お前を葦原の中つ国に遣わしたのは、その国の乱暴な神々を説得して従わせるためなのに、なぜ八年たってもなにも復命しないのだ。』と問いただすのだ」と言われました。


鳴女は天より降ってきて、天若日子の門の神聖な桂の木の上に止まり天若日子に向かって、天つ神の言われたとおり、「おまえを葦原の中つ国に遣わしたのは、その国の乱暴な神々を説得して従わせるためなのに、なぜ八年たってもなにも復命しないのだ」と問いただしました。


天若日子に仕えている天佐具売が、この雉の言っていることを聞いて、天若日子に「この鳥の鳴き声は大変不吉です。射殺してしまいましょう」と進言するやいなや、天若日子は天つ神の下さった弓と矢でその雉を射殺してしまいました。ところが、その矢が雉の胸を貫いて射上げられて、天の安の河の河原におられる天照大御神と高木の神の前に落ちました。この髙木の神は、高御産巣日の神の別名です。高木の神がその矢を取ってご覧になると、血が矢の羽についていました。高木の神は「この矢は天若日子に授けた矢だ」と言われ、それを八百万の神々に見せ「もし天若日子が命令に背かずに、悪い神を射ようとした矢がここに届いのなら、天若日子に当たるな。もし反逆心があるのなら、天若日子よ、この矢に当たって死んでまえ」と言われ、その矢を取って、矢が飛んできた穴から衝き返して下したところ、天若日子が床に寝ている時に胸に当たり、天若日子は死んでしまいました。


さて、天若日子の嫁の下照比売の泣く声が天にも届きました。そこで、天上にいる天若日子の父の天津国玉の神、そして天若日子の天上にいる別の嫁と子供がそれを聞き、降りてきて泣き悲しみすぐに喪屋を作りました。河雁(かわがり)を死人の食物を持つ役にとし、鷺を墓所の箒(ほうき)を持つ役に、翡翠(かわせみ)を死者への御饌(みけ)を作る役に、雀を碓(うす)をつく役に、雉を泣き女の役にして、八昼夜弔いをしました。


◆復命しない神々と末路に登場する神

・天照大御神(あまてらすおほみかみ)
・正勝吾勝々速日天之忍穂耳の命
(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみ)
・高御産巣日(たかみむすひ)の神
・思金(おもひかね)の神
・天菩比(あめのほひ)の神
・天津国玉(あまつくにたま)の神
・天若日子(あめのわかひこ)
・下照比売(したてるひめ)
・天佐具売(あめのさぐめ)
・高木(たかぎ)の神
<伊耶那岐の命の禊により生まれた神>
<天照大御神の勾玉から生まれた神>


<天地のはじめに現れた三番目の神>
<高御産巣日の神の子>
<最初に葦原の中つ国に遣わせられる>
<天若日子の父>
<二番目に葦原の中つ国に遣わせられる>
<大国主の神の娘>
<天若日子に仕える>
<高御産巣日の神の別名>



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