古事記研究 【23】
第3章 地上の平定と天孫降臨 | ||
17.復命しない神々と末路 | 21.地上の平定と国譲り | |
18.建御雷之男の神の派遣 | 22.天孫降臨 | |
19.事代主の神の服従 | 23.嫁選びの過ちと嫁の出産 | |
20.建御名方の神との力比べ | ||
目次| 第1章| 第2章| 第3章| 第4章| ◆古事記「上つ巻」に登場する神々(五十音順) |
第3章 地上の平定と天孫降臨
23.嫁選びの過ちと嫁の出産
ところで、天津日高日子番能邇邇芸の命は、笠沙の岬で美しい女性にお会いになりました。邇邇芸の命は「あなたは誰の娘で、名前は何といわれます」と尋ねました。「私は、大山津見の神の娘で、名前は、神阿多都比売(かむあたつひめ)です。またの名は、木花之佐久毘売(このはなのさくやびめ)といいます」
邇邇芸の命は重ねて「あなたに兄弟はいるのですか」とお尋ねになりましたところ、「私には姉の石長比売(いはながひめ)がいます」と、答えられました。邇邇芸の命は「私は、あなたと結婚したいと思いますがいかがですか」とお尋ねになられました。木花之佐久毘売は「私はお返事しかねます。父の大山津見の神がお返事するでしょう」と答えられました。
そこで、父の大山津見の神に、娘がほしいと使者を遣わされました。父の大山津見の神は大変お喜びになられ、姉の石長比売も副えて、たくさんの結納品を持たせて二人を差し出されました。しかし、その姉は非常に醜くかったのでそのまま送り返されてしまい、妹の木花之佐久夜毘売だけを留めて、一夜の交わりをされました。
一方、大山津見の神は、石長比売を返されたものですから、大変恥じて伝えてきたことには、「私の娘を二人一緒に献上したのには理由があります。石長比売は岩のように永遠に変わらないという意味があります。契っていたなら、あなたも岩のように変わらない永遠の生命が得られていたでしょう。また木花之佐久夜比は、桜の花が満開になるように栄えるという意味があります。しかし、石長比売を返させられて、ひとり木花之佐久夜毘売だけお留めになられましたので残念ながら、天つ神の邇邇芸の命の生命は、桜の花みたいにはかないものとなるでしょう」 つまりこういうわけで、今日にいたるまで天皇たちのお命は永遠ではないのです。
さて、しばらくして、木花之佐久夜毘売は邇邇芸の命に「私にはあなたの子供ができました。もうすぐ産まれます」と言われました。邇邇芸の命は「佐久夜毘売、あなたとは一晩だけです。これは私の子ではない。絶対この国つ神の子に間違いない」と言われました。木花之佐久夜毘売は「私の子が、もし国つ神の子でしたら無事には産まれないでしょう。もし天つ神の子のあなたの子でしたら、無事に産まれるにちがいありません」と言われて、すぐに戸のない大きな御殿の産屋を作ってその中に入り、土で出入り口を塗りふさがせ産屋に火をつけるよう命じ、その中で出産されました。
火の盛んに燃えている時に生まれた子の名は、火照(ほでり)の命と言い、隼人の阿多の君の祖先です。次に生まれた子の名は火須勢理(ほすせり)の命。次に生まれた子の名は火遠理(ほおり)の命。またの名は天津日高日子穂々手見(あまつひこひこほほでみ)の命と言われます。
◆嫁選びの過ちと嫁の出産に登場する神
・天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸の命 (あめにきし くににきし あまつひこ ひこほのににぎ) <葦原の中つ国を統治するために降臨した天孫> |
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・大山津見(おほやまつみ)の神 | <伊耶那岐の命と伊耶那美の命が生んだ、山の神> |
・木花之佐久毘売(このはなのさくやびめ) | <大山津見の神の娘> [別名:神阿多都比売(かむあたつひめ)] |
・石長比売(いはながひめ) | <木花之佐久毘売の姉> |
◇燃える産屋で木花之佐久毘売が生んだ神
・火照(ほでり)の命 ・火須勢理(ほすせり)の命 ・火遠理(ほおり)の命 |
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