古事記研究 【24】

第4章 水をも操る山幸彦

24.海幸彦・山幸彦兄弟による道具の交換 26.兄の服従

25.釣り針探し 27.神倭伊波礼毘古の命の誕生
目次第1章第2章第3章第4章◆古事記「上つ巻」に登場する神々(五十音順)


第4章 水をも操る山幸彦

24.海幸彦・山幸彦兄弟による道具の交換

兄の火照の命は、海幸彦(海佐知毘古)として大小さまざまの魚を取り、弟の火遠理の命は、山幸彦(山佐知毘古)として毛の荒い獣、柔らかい獣を取って暮らしておられました。


弟の火遠理の命は、いつも山のものばかりではなくたまには海のものも取ってみたいと思い、兄の火照の命に「お互いに獲物を取る道具を交換して使いませんか」と再三頼んだのですが、兄はそれを許しませんでした。しかし、あまりにもしつこく言うので、兄は少しの間だけならと言って道具を取り換え、釣りの道具を弟に持たせました。火遠理の命は大喜びで釣りに出かけましたが、いざ釣ってみると思っていたのとはまるで違い、一匹の魚も釣れませんでした。それどころか兄の大切な釣り針を海の中になくしてしまいました。


兄の火照の命も山での獲物を全くとらえることができませんでした。兄は弟に「山の獲物は自分の弓矢で、海の獲物は自分の釣り針でないといけないようだ。お互いに道具を元どおりに戻そう」言いました。弟の火遠理の命は「兄さんの釣り針で魚を釣ったが全然釣れず、とうとう釣り針を海の中になくしてしまいました」と答えました。兄はどうしてもあの釣り針を返せと言われました。弟は困ってしまい、腰につけていた大切な十拳の剣を砕いて、たくさんの釣り針に作り直して弁償しようとしましたが兄は受け取ってくれません。兄は怒って「あの釣り針はとても大切なものだ。代わりのものがいくつあっても、あの一つの釣り針には敵わない。どうしてもあの釣り針を探して返すのだ」と言い張ります。弟は倍の釣り針を作って謝りましたが兄は許してくれませんでした。


弟の火遠理の命が困りはて海辺で泣いていると、そこに塩椎の神が来られて、火遠理の命に「虚空津日高(そらつひたか:空の高い日を仰ぎ見るように尊い)のあなたが何を泣き悲しんでおられるのですか」と尋ねました。火遠理の命は「私は兄さんと道具を交換して釣りをしたが、兄さんの大切な釣り針を海の中になくしてしまいました。それで兄さんにたくさんの釣り針を弁償したのですが受け取ってくれず『もとの釣り針を返せ』と言うので、泣き悲しんでいるのです」と答えられました。


すると塩椎の神は「私は、あなたのために良い手だてを考えましょう」と言われ、さっそく隙間のない籠で小船を造り、火遠理の命を船に乗せました。「私がこの船を押し流しましたら、しばらくはそのまま行ってください。きっと良い潮の路があります。そのまま潮の路に乗って行かれると、魚の鱗のような宮殿があります。それは綿津見の神の宮殿です。その神の門にお着きになると、井戸のそばに桂の木があります。その木の上にいらっしゃれば、そこの海の神の娘があなたを見つけて、相談にのってくれるでしょう」と教えて小舟を送り出しました。


◆海幸彦・山幸彦兄弟による道具の交換に登場する神

・火照(ほでり)の命
・火遠理(ほおり)の命
・塩椎(しほつち)の神
<兄、海幸彦(海佐知毘古)>
<弟、山幸彦(山佐知毘古)>
<海の神の綿津見の神の宮殿への行き方を教える>



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