古事記研究 【25】

第4章 水をも操る山幸彦

24.海幸彦・山幸彦兄弟による道具の交換 26.兄の服従

25.釣り針探し 27.神倭伊波礼毘古の命の誕生
目次第1章第2章第3章第4章◆古事記「上つ巻」に登場する神々(五十音順)


第4章 水をも操る山幸彦

25.釣り針探し

火遠理の命が教えに従って行くと、何から何まで言われたとおりでした。そこで、その木に登って腰を下ろしていますと、ちょうど海の神の娘、豊玉毘売の侍女が出て来ました。次女が水を汲もうとした時、井戸の水の中に光が映って見えました。何だろうと思い仰ぎ見ると、木の上に麗しい立派男性がいて、それが井戸に映っていたのでした。侍女が不思議に思っていたら、その男性は侍女に「水をください」と頼まれました。侍女はすぐに水を汲んで、器に入れて差し上げました。しかし水はお飲みにならず、首にかけていた玉の飾りをほどき、口に含んでその器に吐き入れました。するとその玉は器にくっついたままとなり、侍女は玉をはずすことができませんでした。侍女はしかたなく、玉のついたままの器を豊玉毘売のところに持って行きました。


豊玉毘売は、その玉を見ると侍女に「もしかして、門の外に誰かいるのですか」と尋ねました。侍女は「どなたかわかりませんが、人が私たちの井戸のそばの桂の木の上にいらっしゃいます。たいへん麗しい立派な男性です。私どもの王にもまして、大変高貴なお方です。そのお方が「水を欲しい」と言われたので、水を差し上げたのですが、水はお飲みにならずに、この玉を吐き入れられました。ところがこの玉は器からはずせません。それで、そのまま持って来て差し上げた次第でございます」と答えました。


豊玉毘売は、不思議に思って門まで外に出て見ると、その男性はあまりにも麗しく思わず心をひかれてしまいました。火遠理の命と豊玉毘売はお互いに強く見つめ合いました。豊玉毘売はすぐに海の神である父の綿津見の神のところに行き「門に大変立派な方がいらっしゃいます」と告げられました。それを聞いて海の神がみずからすぐに出て行き、一目見るなり「このお方は、天津日高の御子の虚空津日高というお方だ」と言い、すぐに中へお招き入れ、あしかの皮を幾重にも重ね敷き、またその上に絹の敷物を幾重にも重ね敷いて、その上に火遠理の命にお座わりいただきました。そして、さまざまな御馳走を台に載せておもてなしをし、たくさんの結納品を供えて、娘の豊玉毘売と結婚させました。そして火遠理の命は、そのまま三年間その国にお住まいになられました。


しかし三年が経ったある日、火遠理の命はそもそもここに来た目的は何であったかを思い出して、ふと大きなため息を一つつかれました。豊玉毘売はこのため息を聞くと、父に「あのお方はここに三年住んでおられますが、いつもため息をつかれることなどないのに、昨夜は大きなため息をつかれました。もしかして、何か理由でもあるのでしょうか」とお話になられました。


父の海の神は、直接婿である火遠理の命に娘の言葉を告げ「何か訳でもおありですか。また、ここに来られた本当の理由は如何なことですか」とお尋ねになられました。火遠理の命は、兄の釣り針をなくしてしまい、兄に責められてそれを探しに来た経緯をすべてお話になられました。


◆釣り針探しに登場する神

・豊玉毘売(とよたまびめ)
・火遠理(ほおり)の命
・綿津見(わたつみ)の神
<海の神の綿津見の神の娘>
<山幸彦(山佐知毘古)>
<伊耶那岐の命と伊耶那美の命が生んだ、海の神>



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