第3章 地上の平定と天孫降臨
7. 嫁選びの過ちと嫁の出産
ところで、天津日高日子番能邇邇芸の命は、笠沙の岬で美しい女性にお会いになりました。邇邇芸の命は「あなたは誰の娘で、名前は何といわれます」と尋ねました。
「私は、大山津見(おほやまつみ)の神の娘で、名前は、神阿多都比売(かむあたつひめ)です。 またの名は、木花之佐久毘売(このはなのさくやびめ)といいます」と答えられました。
邇邇芸の命は重ねて「あなたに兄弟はいるのですか」とお尋ねになりましたところ、「私には姉の石長比売(いはながひめ)がいます」と、答えられました。
邇邇芸の命は「私は、あなたと結婚したいと思いますがいかがですか」とお尋ねになられました。 木花之佐久毘売は「私はお返事しかねます。父の大山津見の神がお返事するでしょう」と答えられました。
そこで、父の大山津見の神に、娘がほしいと使者を遣わされました。父の大山津見の神は大変お喜びになられ、 姉の石長比売も副えて、たくさんの結納品を持たせて二人を差し出されました。
しかし、その姉は非常に醜かったのでそのまま送り返されてしまい、妹の木花之佐久毘売だけを迎え入れて、一夜の交わりをされました。
一方、大山津見の神は、石長比売を返されたものですから、大変恥じて伝えてきたことには、「私の娘を二人一緒に献上したのには理由があります。 石長比売は岩のように永遠に変わらないという意味があります。契っていたなら、あなたも岩のように変わらない永遠の生命が得られていたでしょう。 また木花之佐久毘売は、桜の花が満開になるように栄えるという意味があります。 しかし、石長比売を返させられて、ひとり木花之佐久毘売だけお留めになられましたので残念ながら、 天つ神の邇邇芸の命の生命は、桜の花みたいにはかないものとなるでしょう。」
つまりこういうわけで、今日にいたるまで天皇たちのお命は永遠ではないのです。
さて、しばらくして、木花之佐久毘売は邇邇芸の命に「私にはあなたの子供ができました。もうすぐ産まれます」と言われました。
邇邇芸の命は「佐久夜毘売、あなたとは一晩だけです。これは私の子ではない。絶対この国つ神の子に間違いない」と言われました。
木花之佐久毘売は「私の子が、もし国つ神の子でしたら無事には産まれないでしょう。もし天つ神の子のあなたの子でしたら、 無事に産まれるにちがいありません」と言われて、すぐに戸のない大きな御殿の産屋を作ってその中に入り、 土で出入り口を塗りふさがせ産屋に火をつけるよう命じ、その中で出産されました。
火の盛んに燃えている時に生まれた子の名は、火照(ほでり)の命と言い、隼人の阿多の君の祖先です。 次に生まれた子の名は火須勢理(ほすせり)の命。次に生まれた子の名は火遠理(ほおり)の命。 またの名は天津日高日子穂々手見(あまつひこひこほほでみ)の命と言われます。
【追記】
- 石長比売は「永遠性」、木花之佐久毘売は「繁栄」を象徴します。
- 「永遠性」と「繁栄」の対比は、合気道における「変わらぬ心」と「発展する心」の両立にも通じます。
【追記】
- 火遠理の命が「目的を見失ってしまう」姿は、合気道にも通じます。皆さんは、自分の合気道の目的をどこに置いていますか。
- 藤田先生は「俺の受けだけやっていればそれでよいということではない」とよくおっしゃっていました。
- 開祖は「合気道は世のため、人のため」と語られています。